BRICS+の興隆と基軸通貨ドルの終焉 ~何が円安を造ったのか~

BRICS+の興隆と基軸通貨ドルの終焉 ~何が円安を造ったのか~

2024年9月14日

ウクライナ戦争とはそもそも何だったのか?

ペトロダラー体制を崩壊に向かわせるBRICSの興隆は、”金融グローバリストvs BRICS”の対立軸によって生まれた動きです。これを理解するためには、先ずウクライナ戦争とは何だったのかを、拝米政府や拝米マスメディアの似非情報から離れ、事実を直視するところから始まります。この問題における似非情報と真の情報とを見分けるコツは非常にシンプルなものです。例えば、「ロシアによるウクライナ侵略戦争」「ロシアの力による現状変更」などの見出しを見たら、それは概ね”金融グローバリストの発信”だと思って差し支えありません。

ウクライナ戦争の発端については複数の捉え方がありますが、概ね次の二つに分けられます。一つは西側諸国の政府とマスメディアが発信している「ロシアがウクライナに軍事展開した2022年2月(ロシアの特別軍事作戦)」とする見解。もう一つは「2014年2月にウクライナで起こったマイダン・クーデター(マイダン革命)」とする見解です。前者の見解は誰もが聞き飽きているでしょうが、要約すれば、ロシアが地政学的野心に駆られて戦端を開いたとするものです。しかし、ロシアの地政学的野心とは何でしょうか?西側諸国政府も、マスメディアもそこに触れたことはありません。なぜならロシアの真の動機に触れることは、NATOや西側諸国を差配する金融グローバリストの悪事を曝すことになるからです。

マスメディアがこぞって避けるマイダン・クーデターの真相とは、ウクライナの親ロシア派ヤヌコヴィッチ政権を、アメリカと金融グローバリストの介入によって転覆させた暴力革命です。傀儡マスメディアは「NATOやEU・西側諸国との友好関係を望む”反ロシア(西側派)の民衆”が発起し、親ロシア派の暴君ヴィクトル・ヤヌコヴィッチ大統領を追放した。」と、もっともらしい報道を放散し、現在では”Revolution of Dignity(尊厳の革命)”などと称していますが、クーデター当時、ビクトリア・ヌーランド米国務次官補(当時)が、民衆と称する武装デモ隊の中に行進している姿がメディアやSNS等で報道されています。彼女はまだヤヌコヴィッチ大統領が在任中に、駐ウクライナ米国大使と次期暫定政権で後にロシア系住民の虐殺をすることになるアルセニー・ヤツェニュークを首相に据える協議までしており、これも動画サイトで暴露されました。

これらの事実がマスメディアで報じられることはなく、辛うじてネット界隈にあるのは、これらの事実を”陰謀論化”するための偽修正報道です。マイダン・クーデターの反ロシア派(西側派)デモ隊による親ロシア派の虐殺などは、大手情報サイトには掲載されません。Wikipediaなどでは、ロシア派の非人道性や、西側派の正当性を現す事柄については「それらしい”事件”」として名付けられますが、例えば、同年5月2日に起きた『オデッサ事件』(西側派による親ロシア派の虐殺事件)については「双方の衝突で合計43人が死亡した。」とあり、特に事件名の表記などありません。つまり、反ロシア派(西側派)、即ち米国・金融グローバリスト側にのみ正義はあり、暴政極まるロシア側の地政学的な戦略や動機など、全く考慮する必要はない。というわけです。

結局、武装した西側デモ隊に押されたヤヌコヴィッチ大統領はロシアに亡命し、アメリカと金融グローバリストの思惑通り、暫定新政権にヤツェニューク首相が就任し、マイダン・クーデターは成功しました。このクーデターの現地差配者は前述のヌーランド米国務次官補でしたが、勿論、彼女が”金融グローバリストの使い”であることは言うまでもありません。

クーデターによるウクライナ国家の強奪という暴挙に対して、ロシア系住民が6割を占めるウクライナ南部のクリミアでは激しい反マイダン運動が起こり、親ロシア政権が成立したことを受け、プーチン大統領はクリミアのロシア編入を決断しました。これに呼応するかのように、やはりロシア系住民が多い東部のドネツク、ルガンスクなどでも反マイダンのデモが起こり、ウクライナ暫定新政府軍との間で内戦が勃発しました。マスメディアが言うところのドンバス戦争です。

この戦闘には双方、民間警備会社の”民兵”が多く動員され、多くの死傷者が出ましたが、フランス・ドイツの仲介による『ミンスク合意』によって、一時的停戦に至りました。しかしながらこの停戦合意は長続きせず、特に金融グローバリストの代理人で、ウクライナの新興財閥オリガルヒの一人、イーホル・コロモイスキーが所有する民兵集団『アゾフ連隊』などによる”ロシア系住民の虐殺”が多発したことなどを受け、プーチン大統領は”自国民保護”を目的に、ウクライナ東部における『特別軍事作戦』を決断するに至りました。激しい戦闘の最中、ロシアとその友好国は何度か停戦交渉を試みましたが、西側諸国はこれをことごとく妨害し続け、停戦には至っていません。戦闘は今日も続いていますが、ロシアの圧倒的勝利で決着しようとしています。

この戦争で最も犠牲になったのは他ならぬウクライナ国民であり、最大の加害者はアメリカとそれを差配する金融グローバリスト、更にその子飼いのゼレンスキー大統領です。ゼレンスキーは自身の保身と僅かばかりの利権の為に、ウクライナの国富と国民の命を売ったのです。

ウクライナは北東を長くロシアと接し、南に黒海を挟んでトルコや中東、西には東欧、という場所に位置する地政学的要所です。ウクライナにとって、隣国ロシアとの友好関係は安全保障上の必須条件であり、ロシアと敵対している限りは国家の政治経済的安定はありません。ウクライナ戦争とは、自国とNATO諸国との間に”親ロシアの緩衝国”を起きたいロシアと、この地政経済的要所であるウクライナをロシアと対立させ、戦乱の後、グローバル市場化し自身の利益圏としたいアメリカ・金融グローバリストとの争いです。正にアメリカと金融グローバリストによる「力による現状変更」であり、少なくとも2022年2月にロシアが起こした戦争などではないのです。

ロシアのグローバル市場化を潰したプーチン大統領はグローバリスト最大の敵

アメリカと金融グローバリストが執拗にウクライナを狙う理由は、前述したとおりウクライナが地政経済的要所であることの他、プーチン大統領を失脚させることにあります。膨大な地下資源を有するロシアは100年以上前から金融グローバリスト最大の標的の一つであり、またそれを支配することは彼等の悲願でもあるのです。

彼等は19世紀中頃、子飼いのユダヤ系プロイセン人学者のカール・マルクスに共産主義という邪教を作らせ、勃興させた後、ボリシェヴィキを擁して帝政ロシアから国家を奪うことに成功しました。その後、金融グローバリストはソ連という箱を使い、東西冷戦という茶番劇を演じさせました。現在の金融グローバリストの上部構造は、前述したウォール街やシティの銀行家達ですが、その中枢であるロスチャイルド家とカール・マルクスは親戚関係にあります。(マルクス家はイギリス産業革命時代の豪商コーエン家、フランスの電機大手フィリップス家とも親戚関係にある華麗なる一族です。)共産主義も、資本主義も、民主主義も、今世に蔓延る新自由主義やネオコンも、全て彼らが牛耳る学界や言論界を通じて世界中に感染させた病魔です。

共産主義に侵されたロシア(ソ連)は長く不遇の時代を続け、1991年の崩壊を迎えました。 その後、「共産主義と決別し、ゴルバチョフからエレツィン大統領時代の民主化と自由化によって新しいロシアがスタートした。」というのが我々が教科書で習う歴史です。しかし、その実はソ連時代に国有化したエネルギー・金融・マスメディアなどの主要産業を、ソ連崩壊後急速に民営化し、金融グローバリスト子飼いの新興財閥『オリガルヒ』に買収させたのです。金融グローバリストはマネーの力によって、ロシア最大の国富である地下資源を乗っ取ることに成功しました。

これは、ある国家を先ずは『民主化』し、次に『民営化』し、最後に『国際化』(グローバル市場化)し、その国富をマネーに隷属させるという彼等の常套手段です。この手法によって、アメリカや我が国は勿論のこと、数多の国家が彼等金融グローバリストのマネーに飲み込まれ、国家主権は醜悪な”金融主権”に取って代わられたのです。

何故、民主主義と称する選挙システムには多額の資金が必要なのでしょうか。選挙に関する金銭の不正、贈収賄を無くしたければ、全ての民間政治献金を禁止し、選挙資金を全て国費で賄えば済む話です。非常に簡単なことです。しかしながら、殆どの民主国家は政治・選挙における多額の民間資金の流入を法的に認めています。多額の資金が無ければ選挙に勝つことはできません。それを候補者が自己資金で賄うことが叶わなければ、当然他者に頼らざるを得ません。米大統領選挙などでは、千億円単位の資金が無ければ長く巨大な選挙を戦えませんが、そんな資金はまともな候補者は持ち得ないのです。

選挙に自己資本では到底不可能な資金を要求し(民主化)、国家の基幹事業を民間に移譲し(民営化)、それに世界的な公開株式の形態を取らせる(国際化・グローバル市場化)という三段戦法は彼等の悪魔的戦術であり、その最大の武器はマネー、即ち『基軸通貨』です。そして、この悪魔の理を知悉していた稀代の政治家がウラジーミル・プーチン大統領です。

ボリシェヴィキのソ連に国家を乗っ取られて後、エレツィン大統領によってロシアの民主化と民営化は成就し、最後のグローバル市場化まであと一歩のところで誕生したのがプーチン政権です。これは金融グローバリストにとって最大の誤算であり、この政権が長らく継続したことは彼等にとって最大の障壁となりました。

プーチン大統領は、乗っ取られた国富を奪還すべく凡ゆる権力を活用し、国家の基盤たる主要産業のオリガルヒ支配を破壊していきました。当時、ロシアを支配していた7大財閥の内6つがユダヤ系財閥でしたが、「国富はロシア国家とロシア国民に帰属する。」というプーチン大統領の政治理念に従わない経営者を次々に粛清したのです。

特に有名な事件が2003年のホドルコフスキー失脚事件です。オリガルヒの一人でロシア石油大手ユコスの経営者ミハイル・ホドルコフスキーが、同大手のシブネフチと合併し、その株式をエクソン・モービルとシェブロンに売却しようとした政略をプーチン大統領は阻止し、ホドルコフスキーを逮捕失脚させたのです。

ホドルコフスキーはロシアの国富を金融グローバリストに解放する為の『オープン・ロシア財団』を、今年2月26日に死去したロスチャイルド・ロンドン家当主ジェイコブ・ロスチャイルド卿と共同でロンドンに設立し、アメリカの同事務所には、やはりグローバリストの代理人ヘンリー・キッシンジャーを就任させるなどしていました。

脱税容疑で逮捕投獄されたホドルコフスキーはその後、2013年の恩赦により国外に亡命しましたが、ロシアの國體保持の政治理念に反し、エネルギー資源という国富を金融グローバリストに売り渡す売国奴を、プーチン大統領は決して許さなかったのです。

このプーチン大統領による一連の動勢は、ホドルコフスキーらオリガルヒの差配者にとっては宣戦布告と同じです。その反撃とばかりに翌2004年、ウクライナにおいて『オレンジ革命』と呼ばれる政乱が起こりました。親ロシア派ヤヌコヴィッチ首相の選挙当選に対する反ロシア派(西側派)のデモが起こり、再選挙により親西側派のユーシチェンコ候補が勝利したのです。同様の”民主化革命”は2003年以降東欧全体で起こり、次々に親ロシア派の政権が西側派の”民主化政権”に取って代わられたのが『東欧カラー革命』です。

この動きはアラブ世界にも飛び火し、『アラブの春』と呼ばれる民主化革命がアラブ世界にも広がりました。言うまでもなく、これらを差配し主導していたのは金融グローバリストとその代理人達です。その一人、ジョージ・ソロスが創始した”国家のグローバル市場化”を目的とするNGO『オープン・ソサエティ』は最も有名な民主化革命コンサルタント組織です。ソロスはマイダン・クーデター以降の戦乱を助長し、ミンスク合意による停戦を痛烈に批判するなど、ウクライナ争乱を支持し続けていた人物です。

金融グローバリストにとって、プーチン大統領が政権を握るロシア国内でこれらのグローバル市場化政策を実行することは困難です。ロシアの周辺国での民主化・民営化・グローバル化の目的は、本来ロシアでそれを完成させたい彼等にとっての”避難的戦略”ともいえるのです。

彼等にとって本丸はあくまでロシアです。周辺国という外堀をグローバル市場化によって埋め、地政経済的要所であるウクライナの戦乱によってプーチン大統領を失脚させることが、ロシアという本丸を攻めるうえで有効であると判断したのでしょうが、ロシアは彼等が想定する以上に強かったのです。

上記の金融グローバリストとロシア・プーチン大統領との約20年にわたる攻防は、グローバリスト最大の敵がプーチン大統領であることを明確に示しています。 BRICSの興隆は、ウクライナ戦争をきっかけとした”金融グローバリスト支配”に反目する国家の目覚めであり、国家単位の反グローバリズム運動です。その中心軸となる国家がロシアであり、核となるリーダーがプーチン大統領であることは、反グローバリズムに立つ覚悟を決めたBRICS諸国にとっては必然的なことなのです。

反基軸通貨同盟BRICS+の米ドル離れ

さて、令和6年2024年1月1日に”10か国体制”がスタートしたBRICS+ですが、加盟各国が批准する『BRICS原則』の中で、最も重要なものの一つが、「各国の相互貿易における自国通貨使用の拡大」という通貨・貿易の規範です。規範というよりは「特定の通貨を指定しない。」ということであり、即ち基軸通貨・米ドルの一極支配を受けないという言外の宣言でもあります。

実際に、原油を含む国家間の商取引において、既にBRICS諸国は各国通貨を使用しています。例えば、インドは、アラブ首長国連邦からの原油購入にインド・ルピーでの支払いを2023年12月から開始していますし、翌2024年1月には、インド・ルピーとUAE・ディルハムでの相互直接取引に至っています。また、中国の習近平国家主席は、2022年12月リヤド湾岸サミットにおいて、中近東諸国に対して人民元での石油取引を要求しています。更に、ロシアのガスプロムと中国石油天然気集団公司は同年9月、ルーブル・人民元での取引に合意しました。

今年2月、プーチン大統領は、タッカー・カールソンとのロング・インタビューの中で、現在の国家間決済について問われ、「2022年まで第三国との取引通貨の5割は米ドルだったが、それが今では13%まで落ち、約3%にすぎなかった人民元での決済が今では30%を超え、ルーブル決済も同様に34%となっている。」と答えています。

少し前まで、これら各国の動きは、ペトロダラー体制が”布かれている筈”の現代において全く考えられなかった大事件です。つまり、米ドルがもはや基軸通貨の地位を失いつつあるということです。これまで世界中をこの呪縛に磔ていた”闇の力”が白日の下に晒され、明らかに衰えているのです。この大きな畝について、プーチン大統領は先のタッカー・カールソン・インタビューでこうも発言しています。「アメリカがロシアにドル制裁をしたことで各国のドル離れが起こった。あなた方(アメリカ)は何をしているのか?自分でわが身を滅ぼしているのです。」